2008年5月24日土曜日

庭木の土 1

わが家の前の市道を西へ一四〇メートルほど行くと、南側に中部電力があり、その西隣にハローワークと労働基準監督署の入っている総合庁舎がある。平成十四年四月に相次いで竣工した。それぞれに広い駐車場があって、緑地には樹木や草花が植えてある。

都市計画法の関係で、道路に接した敷地は二メートル程の幅で市に提供され、新しく歩道ができた。私はその歩道を毎日散歩する。かっては某社の資材置場と空地で、ゴミが捨ててあったり雑草が生えていたりしていたが、明るい近代的な建物ができたため環境がよくなり、散歩するにも大変気分がよくなった。

ところが、この二つの施設の植木や草花に同じような異変が生じてきた。私は散歩がてら工事の進捗状況をつぶさに見ていたので、異変発生については当初から危惧していた。

 平成十三年に労働総合庁舎の建物工事が着手され、それがほぼ出来上がった頃から周りの緑地工事が始まった。緑地を囲う高さ三五センチほどのコンクリートブロックが埋められた時、深さが少し足りないようだが、このくらい土を入れればまあよかろうと思った。

ところが、次に行ったとき見ると、工事用の残土と思われるような瓦礫混じりの土砂が半分ほど入っていたので、これはどうするのだろうと注意深く見守ることにした。そして二、三日後に行くと、その上に植栽土を入れて高さ四〇センチほどの若木が植えてあった。

私が見たところ、表土はコンクリート壁よりも三センチくらい低いから植木用の土は一二センチほどしか
ない計算になる。植木は今は小さくても成長して大きくなった時には栄養不足、水不足で枯れるのではないかと心配になった。

また、東側の中電営業所との境界に沿って一列に三〇センチ間隔で植樹してあったが、これでは間隔がせますぎる。少し大きくなったら間引きするつもりなのだろうか。さらに、東側の入り口近くに四〇平方メートルほどの緑地が三か所あって、高さ四〇センチほどの若木がこれまた三〇センチ間隔でびっしり植えてあった。

どうしてこんなに密植するのだろう、これでは生育の障害になるのではないかと思った。それから五年経ち、東側入り口の緑地の植木は高さが一・四メートル位に成長し、案の定、枝が重なって通風が悪くなっていた。

これについて総合庁舎の担当者はどのように考えているのかと思い、本年五月三十一日、一階のハローワークへ行き、担当の女性の管理課長Y氏に会い、私は来意を率直に述べた。

「私は毎日この前の道を散歩していますが、道路沿いの緑地は美しく、生き生きとしていてもらいたいと思います。この庁舎は民間企業ではないのでメセナ(芸術や文化活動に対する企業の支援と擁護)を問題にすることはないと思いますが、公共施設も地域・社会から好かれる存在であってほしいと思います。」

「はい、私どももそう思っています。この建物の屋上には太陽熱利用の温水器を設置していますが、これは地球にやさしく地域社会に役立ちたいという考えのあらわれです。」

「私はこの建物の工事を最初から見ておりますが、植木の根元の土が少ないのが心配です。今までよく木が枯れなかったですねー」

「いいえ、放っておけば枯れたでしょう。去年の夏は暑さが厳しかったので、私が毎日撒水していました。」 私はびっくりした。

管理課長が自ら撒水しないと植木が枯れるということは正常ではない。〝撒水は私の仕事ではない〟と考える管理課長が着任したら忽ち木は枯れてしまう。お節介とは思ったけれど成り行きで、私が「これは土全体を入れ替える必要があるかもしれない大きな問題です。すぐに所長に話して上部へ働きかけ早急に対策を立ててもらったほうがいいですよ。

そのときは口頭ではなく文書ではっきり伝えてください。そうすれば、あなたとしては自分のなすべきことはしたという証拠になります。あとから、責任を問われることもなくなります。」と助言すると、課長は「分かりました。

予算がなくてできないと言われるかもしれませんが、そうします。」と応答した。私は、これは簡単にはいかない問題かもしれない、と思いながら総合庁舎を出た。

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