中電にはこのような不当行為を未然に防ぐ手立てがある筈だ。工事部門の技術者ひとりを造園期間中、現場に配置しておけば、こうした問題は防げたに違いない。
それができなくても、工事完了引渡し時にしっかり現場をチェックして回れば、西隣の総合庁舎の庭は黒々とした植栽土なのに、中電側は小石まじりの土であることが一目瞭然である。変だと思って掘ってみれば下には工事用の残土が入っているのがすぐ分かるのにそれをしなかった。
総合庁舎の場合も官庁だから造園工事に目を光らせる人はいないかもしれないが、工事完了引渡し時に三、四か所ほど掘ってみれば、下に非植栽土が入っているか否かは明らかになるはずである。何故それをしなかったのだろう。
それは別として私が最も驚いたのは、ハローワークのY管理課長に「早く間引きしないと全体が枯れますよ」と忠告したところ、「植木の管理規程の中に、枯れた木を抜くのはいいが、生きている木を抜くことは禁じられています、」との返答があったことだ。
「国有林の中の大木を勝手に間伐するのではなく、たかが三〇センチ間隔で密植された若木を間引くことができない」という非常識で杓子定規な規程は早急に改正すべきだと思う。
要するに、工事仕様書の通りに施工されない根本原因は、設計事務所が設計と監理を兼ねているからである。けれども、これを分離することは施工業者と設計事務所の死活問題に直結するから容易に変えられないのであろう。
2008年6月5日木曜日
庭木の土 6
造園工事で下層部に非植栽土を入れるのは何も公共的な場合だけではなさそうだ。中電営業所とハローワーク・労基署の総合庁舎ができた一年後、街なかに住む知人のNさんが住宅を建て替えた。
デザインがよく機能的にもすぐれた木造二階建ての素敵な家である。道路に面して車二台が駐車可能のスペースをとったので、入り口がやや狭くなったが、門から玄関までの通路の両側に小さな庭をつくった。
特に北側にはブロック塀に沿って少し高く囲った花壇を設けた。その中に三分の一ほど小石の混じった非植栽土の土砂をいれたので、おや、ここでも中電やハローワークと同じようなことをしているなと思った。その上に植栽土を入れて草花のほかに高さ二メートル余の木も植えたが、その後三年ほど経つが植木は枯れないのでそれでよかったのだろう。
О建設社長Kさんの説によれば「少し大きな木を植えるときは、その木の根の部分だけは生育に必要な植栽土を深くまで入れる」のが鉄則らしいが、Nさん宅の場合は、そのようにしてあるのかもしれない。
しかし何年か経って、非植栽土を入れた所にも草花の代わりに木を植えたくなったとき困るのではなかろうか。私が施主だったら追加費用を出しても全部植栽土にしてもらう。いや、それよりも見積書の段階で、非植栽土を入れるか否かを先ず確認するであろう。何れにせよ、個人が造園する場合には、施主が工事をつぶさに見ていればいいのであるから、解決できないことではない。
中電の場合のような大きな造園工事を仕様書通りに行わせるにはどうしたらいいか。Kさんに伺ってみた。
建設工事は設計業務、施工監理業務および工事施工の三つに分かれる。このうち設計と監理は利害が相反する部分があるので、別々の会社に委任するほうが望ましいが、わが国の建設業界では、設計業務と施工監理業務を設計事務所が兼ねることが多い。
おそらく、中電の場合は最低限の費用で工事をさせようとする。設計事務所は施主の意に適うように設計して見積もりをつくる。しかし、今一つの仕事の施工監理面では、仕様書通りに厳格に施工させるのは造園業者泣かせのような気持ちになって、施主の眼の届かない所の手抜きを見逃してやることになる。
深さの半分に非植栽土を入れたり、近い将来、間引きしなければ枯れるのが分かっているのに密植させてしまったのもそのためである。設計事務所はそれらの不当な行為を見て見ぬ振りをしているのだ。
また、瑕疵補償(植えた木が枯れた場合などの保障期間)は一年で、一年後に枯れても植えかえる義務がないということも先刻承知の上で誤魔化し仕事を黙認しがちなのである。
その結果、中電の工事担当者は工事を安く仕上げたと上司から褒められ、設計事務所は予定通り仕事が終わり、造園業者はおこぼれに預かることになる。万事めでたしめでたしに見えるが、しかし、長い目で見れば中電は大損をしたのだ。後日になって、ほとんどの土を入れ替えることになるからである。
デザインがよく機能的にもすぐれた木造二階建ての素敵な家である。道路に面して車二台が駐車可能のスペースをとったので、入り口がやや狭くなったが、門から玄関までの通路の両側に小さな庭をつくった。
特に北側にはブロック塀に沿って少し高く囲った花壇を設けた。その中に三分の一ほど小石の混じった非植栽土の土砂をいれたので、おや、ここでも中電やハローワークと同じようなことをしているなと思った。その上に植栽土を入れて草花のほかに高さ二メートル余の木も植えたが、その後三年ほど経つが植木は枯れないのでそれでよかったのだろう。
О建設社長Kさんの説によれば「少し大きな木を植えるときは、その木の根の部分だけは生育に必要な植栽土を深くまで入れる」のが鉄則らしいが、Nさん宅の場合は、そのようにしてあるのかもしれない。
しかし何年か経って、非植栽土を入れた所にも草花の代わりに木を植えたくなったとき困るのではなかろうか。私が施主だったら追加費用を出しても全部植栽土にしてもらう。いや、それよりも見積書の段階で、非植栽土を入れるか否かを先ず確認するであろう。何れにせよ、個人が造園する場合には、施主が工事をつぶさに見ていればいいのであるから、解決できないことではない。
中電の場合のような大きな造園工事を仕様書通りに行わせるにはどうしたらいいか。Kさんに伺ってみた。
建設工事は設計業務、施工監理業務および工事施工の三つに分かれる。このうち設計と監理は利害が相反する部分があるので、別々の会社に委任するほうが望ましいが、わが国の建設業界では、設計業務と施工監理業務を設計事務所が兼ねることが多い。
おそらく、中電の場合は最低限の費用で工事をさせようとする。設計事務所は施主の意に適うように設計して見積もりをつくる。しかし、今一つの仕事の施工監理面では、仕様書通りに厳格に施工させるのは造園業者泣かせのような気持ちになって、施主の眼の届かない所の手抜きを見逃してやることになる。
深さの半分に非植栽土を入れたり、近い将来、間引きしなければ枯れるのが分かっているのに密植させてしまったのもそのためである。設計事務所はそれらの不当な行為を見て見ぬ振りをしているのだ。
また、瑕疵補償(植えた木が枯れた場合などの保障期間)は一年で、一年後に枯れても植えかえる義務がないということも先刻承知の上で誤魔化し仕事を黙認しがちなのである。
その結果、中電の工事担当者は工事を安く仕上げたと上司から褒められ、設計事務所は予定通り仕事が終わり、造園業者はおこぼれに預かることになる。万事めでたしめでたしに見えるが、しかし、長い目で見れば中電は大損をしたのだ。後日になって、ほとんどの土を入れ替えることになるからである。
2008年6月3日火曜日
庭木の土 5
八月六日、私は中電の庭木管理者で営業課副長のMさんに会った。来意を告げると、彼は同僚の副長Bさんから話を聞いているとのことであった。私が「それであなたは何をしましたか」と尋ねると、「枯れた木を除いてサツキを植え、除草をしました」と言う。
それは私の予想したとおりの返答であった。ハローワークではこの二か月の間に厚労省とまで交渉して土を入れ替える予算を申請したというのに、中電では何らの改善対策も講じていないのである。むかしはお役所仕事といえば遅いことを指したが、これでは全く以て逆である。
私はMさんを現場に連れて行って話した。アメリカシロヒトリのためハナミズキが枯れかかっていること、二度目のバラもかなりの部分が枯れたこと、ハローワークの方は黒い植栽土であるのに中電のは小石混じりの表土であること、これらはすべて土を入れ替えなければ解決しないこと等を詳しく説明した。
そして更につづけて、「枯れた木や小石混じりの土を写真にとり、文書にまとめて静岡支店の担当者に
提出して回答を求めてください。できれば静岡支店の担当者を連れてきて、現場を見てもらって下さい。そうすることによって解決の方向へ一歩近づくと共に、問題がおきた時、お前は何をしていたんだ、と責任を問われなくなるでしょう。
中電は今、原発は安全ですと盛んにPRしていますが、『自分の営業所前の植木すら管理できずに枯らすような会社が、世界的に難しいとされている原発の安全管理がどうしてできるだろう』と世間の人は思うでしょう。ですから、ハナミズキを枯らさないようにするのは、あなた自身の責任だと思ってしっかり
やってください。」
私は自分の孫よりも若いMさんと話しているうちに次第に熱が入り、自分の耳が遠いせいもあって、つい大声になっていた。彼は神妙に聞いてくれていたようだったので、ある程度の対策が進むだろうと思いながらMさんと別れた。
それは私の予想したとおりの返答であった。ハローワークではこの二か月の間に厚労省とまで交渉して土を入れ替える予算を申請したというのに、中電では何らの改善対策も講じていないのである。むかしはお役所仕事といえば遅いことを指したが、これでは全く以て逆である。
私はMさんを現場に連れて行って話した。アメリカシロヒトリのためハナミズキが枯れかかっていること、二度目のバラもかなりの部分が枯れたこと、ハローワークの方は黒い植栽土であるのに中電のは小石混じりの表土であること、これらはすべて土を入れ替えなければ解決しないこと等を詳しく説明した。
そして更につづけて、「枯れた木や小石混じりの土を写真にとり、文書にまとめて静岡支店の担当者に
提出して回答を求めてください。できれば静岡支店の担当者を連れてきて、現場を見てもらって下さい。そうすることによって解決の方向へ一歩近づくと共に、問題がおきた時、お前は何をしていたんだ、と責任を問われなくなるでしょう。
中電は今、原発は安全ですと盛んにPRしていますが、『自分の営業所前の植木すら管理できずに枯らすような会社が、世界的に難しいとされている原発の安全管理がどうしてできるだろう』と世間の人は思うでしょう。ですから、ハナミズキを枯らさないようにするのは、あなた自身の責任だと思ってしっかり
やってください。」
私は自分の孫よりも若いMさんと話しているうちに次第に熱が入り、自分の耳が遠いせいもあって、つい大声になっていた。彼は神妙に聞いてくれていたようだったので、ある程度の対策が進むだろうと思いながらMさんと別れた。
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