2008年6月15日日曜日

庭木の土 8

 九月二十一日の九時過ぎ、Kさんと一緒に再びくだん件の植栽状況を見に行った。前回から二か月近く経っている。

先ず中電のほうを見ると、四本のハナミズキには葉が殆どなく、残りの四本も葉がまばらであった。Kさんは「これはアメリカシロヒトリの害よりも水不足が大きな原因です。植栽土でないため保水性が少なく、雨が降ってもすぐ乾いてしまいます。もうだめですね。枯れるのを止めることはできません」と断定した。

続いて西隣の総合庁舎の植木を見ると土が湿っていたので、これはY管理課長が撒水したのだろう、と思った。Kさんは入口近くの庭を見て、「奥のほうはドウダンです。新芽があれだけ伸びているところをみると、来年はいちだんと大きくなって風通しが悪くなり、蒸れて虫がついて大部分が枯れる心配があります。今年あたり間引きしないと手遅れになります。」と指摘された。

早速その日の午後、ハローワークへ行ってY課長に会い、「今年の夏は暑かったですね」と言うと、矢張り「私が毎日水をかけました」という言葉が返ってきた。私は「予算が付き、土が追加して入れられ、間引きが行われるまで油断しないようにがんばってください」と彼女を励ました。

それから四日後の二十五日午後、中電の副長Mさんに会うと、彼は「益田さんのおっしゃることは十分承知しております。ただ、今年は予算がないので来年の予算に必ず入れてやります」と先手を打つように言った。

今の中電としてはその程度のことしか手が打てないのであろう。しかし、このままでいけば枯れたハナミズキやバラが、来年の初夏まで、玄関前のいちばん目立つところに打ち萎れていることになる。

Mさんや所長は自宅の玄関前の木が枯れたとき、予算がないからと言って放置しておくだろうか。おそらくそのようなみっともないことはせず、ある程度の費用がかかっても善処するに違いない。それはともあれ、枯木に対する対策を具体的に提案する人がひとりも居ず、私に指摘されて初めて重い腰を上げるとは、この会社の管理体制はいったいぜんたいどうなっているのであろうか。

たぶん、中電という大企業は社長から平社員まで「会社は自分の家と違う。余分なことはせず言われた事だけをやって給料をもらえばいい」とでも考えているのだろう。そういえば営業所で働く社員たちには志気というものがまるで感じられなかった。これではいくら「原発は安全です」と言われても、私にはとても信じられない。

 アメリカとソ連では原発事故が起きて大きな被害が生じた。日本の原発も浜岡を含めて時どき事故が発生している。このような状態では、私たちは枕を高くして寝ることができない。

腹の立つことの多い昨今だが、いずれにしても私のささやかな提案によって、島田労働総合庁舎と中電島田営業所の植木対策が一歩前進するのではないかと思う。その点から言えば私の取るに足らぬ努力も若干の効果をあげたように思われる。そして、これによって最も喜ぶのは、近くを散歩する私たちよりも、寧ろ、安住の地を得る可能性の生じた庭木たちであろう。

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