2008年4月27日日曜日

すんぷ夢ひろば2

客席は二百ほどあり、新築なので綺麗で感じがいい。私は耳が遠いため前列の席に陣取った。椅子が新品なので市民会館よりも坐り心地がいい。この演芸場にはドサ回りとはいえ粒揃いの芸人が出演するので結構たのしめる、との評判なので期待して開演を待った。

 一番手はあずまたますけ東玉助という芸人の漫談で、世相などを話題として風刺や批評を交えた軽妙な話芸で私たちを大いに笑わせた。

 二番目に登場したさがみ三太がこの一座のまとめ役らしい。浪曲入りの漫談であった。曲師の三味線がどうもテープのようだったので、あとから訊いてみるとやはりそうだった。なま生の場合は曲師が浪花節に合わせるが、テープの場合は語り手がテープに合わせる。それに三味線の音色も違う。次はかがみせん鏡味仙さぶろう三郎といういかめしい名のたいかぐら太神楽芸人がからかさ傘の上で皿やまり毬などを回す年季の入った芸を披露してくれた。

 続いてケン正木という人の手品。かって縁日やテレビで見たことがあるが、私はいつ見ても手品は愉しいと思う。いかに指先や小さな器具を巧みに操る訓練の結果とはいえ、あの限られた洋服のどこに鳩を二羽も三羽も隠しておくのか、それをどうして取り出すのか、目を皿にして見ていても分からないのだから不思議という外ない。

 この日のトリは、柳屋松太郎という芸人の紙切りであった。鋏で紙を切り抜いていろいろな物の形を作る芸だが、かってテレビで見たことはあるものの、実演を見るのは初めてなので興味を持ち、目を凝らせて実技を見守っていた。B4判大の白の模造紙を縦に半分に折り、一隅に鋏を入れて紙を大きく小さくくるくる動かしながら切って行く切り絵は、一本の線で絵を描くようなものである。時どき軽口をたたき、客を笑わせながらも手先は絶えず微妙な動作を続ける。何ができるだろうと見詰めていると、やがて手が止まった。切り抜いた紙を拡げて黒い紙の上に乗せ、透明なビニールの袋に挟んで客席に見せた。それは七福神のひとつ大黒様の顔であった。大黒様の顔は左右対称であるから、紙を二つに折って切れば作り易い。客席の横の壁にも額に入れた大黒様の切り絵が掲示されていた。出来上がったその切り絵は希望者が貰った。

つづく

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